家づくり

Case. 07リノベーション

土地のご紹介

築33年純和風住宅のリノベーションプロジェクト

建物の現状
 
外観内観とも築年数にしてはとてもきれいな状態である。しかし、空き家であった期間が長く、ベランダから雨水の浸水が見られ、天井と床に雨漏れの跡があった。庭は雑草に覆われ、庭木も無尽蔵に伸びており、伐採剪定が必要である。
ただこれらは大きな問題ではなく、差し引いてもこの建物には余りある魅力が勝っていると感じた。

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その魅力とはまず、建物としての構造が丈夫な造りであるということだ。
日本では地震が頻繁に発生するため、建築物の構造躯体(建物を支える部材)が重要である。垂直方向の力を支える大梁は、直径400mmもの丸太を使用、水平方向の力を支える4寸柱と相まって堅牢さを保っていることが挙げられる。
 また、日本建築の優美さを持ち合わせている点も見逃せない。
和室には職人の手彫りによる欄間が施され、雪見障子から望む庭木に四季折々の風情を感じる。床の間、仏間、広縁、濡れ縁、灯籠、飛び石、いぶし瓦…失われつつある伝統ある日本建築の粋がここには残されていた。



リノベーションCase. 07

リノベーションプロジェクト開始

 コンセプトは「日本建築の魅力を引き出し、住空間を豊かなものにする」。
和空間としての統一性を持たせるため、ひのき無垢材を最大限に活用した点が特筆すべき事項である。
 ひのきは、見た目の美しさや耐久性に優れていることから、現在も伊勢神宮などにも使用され、格式高い木材として古来より日本人に愛されている。
 この物件は、和室の畳以外すべての床面に、ひのき無垢材をふんだんに使用している。リビングはもちろん、二階の各部屋、廊下、トイレの床に至るまで総ひのき貼りである。
また、洗面化粧台やトイレにもユニット製品は用いず、ひのき一枚板を使用した作り付けの洗面手洗いを設置した。

 浴室は作り付けの大ぶりな浴槽を活かし、寒々としたタイル張りからモールテックス(モルタルのデザイン性と耐久性を兼ね備えた左官材)に改修、トーンを落としたダウンライトを使用することで落ち着いた空間を演出。マットブラックなアルミ製のオーバーヘッドシャワーを採用することでホテルライクな浴室に仕上がった。
 庭は伐採剪定ですっきりとし、砂利を敷き詰め、杉のウッドフェンスを設けることで癒しの空間がよみがえった。

建売住宅では決して味わえない、日本建築の優美さと豊かな住空間が備わった邸宅が完成した。

設計:HIRO建築設計事務所
施工:株式会社と組
撮影:熊木 徹